みつむらのブログ。

みつむらです。

The Blue 1

 僕がこの場所に来たことに、特に理由はなかった。ただなんとなく、この場所にいたいと思った・・・

 

 終業式の後、平日午後二時の誰もいない公園、そんな場所の日蔭のベンチに、僕は座っている。そりゃあこんな暑い日の最も暑い時間に外に出て、こんな暑苦しい公園に来ようなんて言う人はそういない。僕にしたって、ちゃんと日蔭にいるにもかかわらず、汗だくで何度も自分の体をタオルで拭かなくてはならなかった。

 じゃあ、自分は何でこんな場所にいるのだろう? さっきも言ったように、最初の内は何の理由もなく、ただ学校かえりにふらふらっと立ち寄っただけのつもりでいた。でも、暑さで回らない頭を何とか動かしてその理由を考え出してみると、結局僕は、この暑さというものを、純粋に感じたかっただけなんだと気づかされた。暑さという感覚を体中にしみ込ませることで、自分が一つの生き物としてこの世界に確実に存在しているのだということを確かめたかったのだと。

 そう感じると、僕は自分のやっていることが間違っていなかったと素直に思えた。幸福感が僕の体中で暑さと混ざり、溶けあった。

 僕の視界のあちらこちらに陽炎が見られた。目の前の地面が歪み、遠くの建物が歪んだ。ふと上を見上げると、無数にある葉の隙間から力強い木漏れ日が太い矢のように突き刺さった。木々からは鳴りやむことを知らない蝉の声が響いた。どれもありきたりな光景だ。ありきたりな歪み、ありきたりな光線、ありきたりな音・・・

 しばらくしてから僕はベンチから立ち上がり、日向に出た。近くで爆弾でも落ちたかと思いたくなるような熱線が、僕に降り注いだ。遠くに壮大かつ荘厳とも言うべき雲がそびえ立っていた。これもありきたりだ。ありきたりな夏の風物詩。

 でも、そんなありきたりなものたちでさえ、今の僕には愛おしかった。目で見ることのできる世界のどれもが美しく、儚く、深みのあるものととらえることができた。

 こんなことをあいつらに言ったら、また「馬鹿かお前!」とつつかれるだろうなと、自分のことを遠くから見たらすぐにわかった。でもどうしようもないんだ。それらが今の僕にとっての「幸福」なのだから。

 

 また夏が始まる。こんなに清々しく夏を迎えられるのはいつ以来だろう? いや、生まれて初めてかもしれないな。

 

 

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昔書いた小説なり文章なりを投稿することにしました。

今回は初めて書いた小説の冒頭です。

まだ続く話なので継続して投稿していこうと思います。