The Blue 9
まだ夏の暑さを残しながら、新学期が始まった。始まってすぐに文化祭が行われる。学校がいつも以上に賑やかになる。クラスで行った劇は、素人の取り組みにしては中々の出来だった。僕も、自分の与えられた役割を難なくこなすことができた。
その一週間後には体育祭も行われ、僕はここでも、そこそこの運動能力を発揮してクラスにまずまず貢献した。今ではあの3人以外のクラスの大体の人たちとも、僕はそれなりに話をするようになっていた。人見知りを自覚していた自分にとって、このことはとても驚くべきことであり、ちょっと前の僕からしたら考えられないようなことであった。
立て続いた行事が一通り終わり、学校は少し落ち着きを取り戻した。イベントの賑やかさはそんなに嫌いではなかったけど、個人的には実を言うと、静かな学校の方が好きだったりする。そして気が付くと、もう次の定期テストの時期が近づいていた。
そんなある日の昼休み、4人はいつものように教室内で集まって昼食をとっていた。
「いろいろ一段落着いたと思ったら、今度はテストか。嫌になっちゃうなあ、もう」ジョーがぼやく。
「やりたいこともなかなかできないしな」
「夏もちょっと旅行行っただけで終わっちゃったもんな」ヨシもケイちゃんも同意する。
なかなか明るい話題にならないので、
「でも、テストとかもちゃんとやろうと思ったら、割と面白かったりするじゃん」と僕が前向きな主張をしてみる。
「ニシムラ君」
「はい」
「そういう境地には、文化祭や体育祭でも大活躍で、テストの点数も申し分ない人にしか辿り着けないわけ」
「あっ、はい、すいません」僕は恐縮する。して良かった試しがないので、もう敢えて反論はしない。
「でも、ショウちゃんの言ってることは一理あると思うな」ここでケイちゃんがフォローしてくれる。
「嫌だなあって思ってたことも、ちゃんと取り組んでみたら意外と楽しかったりするじゃん。俺は時々そういう経験あるよ。物事何でも、楽しんでやれたら勝ちじゃんか。それに、テストだって何も学年トップを無理に目指す必要なんてないんだからさ。各々の目標の点数や順位を目標にすればいいんだよ。それでもし駄目なら、次はもっと頑張ろうとか、やり方を変えてみようとか、いろんな工夫ができるようになる。そうしていけば、テストとかも案外面白くなったりするんじゃない?」
「おお、流石はケイちゃんだ」
「あなたの心は、江の島から見渡せる広大な太平洋よりも広い」2人が絶賛する。
「やめてくれよ。ていうか本当に偉いのはショウちゃんじゃないか」
「えっ、なんで俺?」
互いに変な譲り合いになってしまう。そうこうしているうちに、昼休みも終わってしまった。
それにしても、いつの間にか自分は随分前向きになったな、とふと思う。
皮肉なことに、そうなれたのは彼らのおかげだったりするのだけど。